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第1段階:ゼロからイチをつくる(組織の法則:会社成長の5段階説)

起業家精神あふれる創業者が、志を持って新しい会社をつくるのが最初のステージです。

パナソニック創業者の松下幸之助氏をはじめ、京セラ創業者の稲盛和夫氏、アップルを共同創業したジョブズやウォズニアックなど、時代を作った多くの創業経営者が起業した直接の理由は、当時勤めていた会社の「上司の壁」に阻まれ、新しいアイデアが社内で実現できなかったからです。(*このように「バカの壁」ならぬ「上司の壁」「組織の壁」ができる背景については「第3段階」「第4段階」の章で説明します。)

「アイデアを諦め、我慢して働き続けるか」
「アイデアを実現するために飛び出すか」

について悩み、そして自分のアイデアが世に受け入れられる事を信じて会社を作る選択したのです。(現在でもこの構図はほとんど同じです。)



<このステージの特徴>
・ 会社が小さいので、社長と社員の間でいろいろなコミュニケーションが行われる。公式な場でのミーティングから、赤ちょうちんの「飲みニケーション」まで、その形式は様々

・ 社員は会社と一緒に成長する実感を持っているので、長時間労働もいとわない

・ マネジメントスタイルは顧客に合わせて柔軟に変化する

・ 創業者は、いわゆる「管理」が嫌いか、もしくはあまり興味がない



<コンフリクト:リーダーシップ(統制)の危機>

・古い業界体質や大手企業にチャレンジャーとして立ち向かい、ゼロからイチを作っていくという一種の「熱狂」の中で業務が行われる。そして、それぞれの社員が1人何役もこなす。

・ 会社が成長するにつれて社員も増え、だんだんと社内が混乱してくる。そこで管理体制が必要になってくる

・ 創業者は自分の好きな仕事や、こだわりを実現するために起業したので、基本的にその仕事を人に任せるのを望まない。その一方で、仕事やスタッフの増加によって、手一杯になり身動きが取れなくなる。その結果、自分が望まなかった「管理」を迫られるようになる

・ 創業者の「右腕」(いわゆるNo.2)として動ける人材を確保する事で、会社は次の段階へと進める。(これができなければ、社長はいつまでも一人で仕事を抱えこんでしまい、そのキャパ以上に成長する事は厳しい。)

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<マネジメントコントロールの視点>
・ 十分な金銭的なインセンティブを出す余力がなく、これからどうなるかも分からない零細企業に人を引きつけるには、経営者が熱いビジョンを語り、それを実現するために一緒に働く仲間(同志)を集める必要があります。

・ 社員を一つの方向に導いていくためには、ある程度のワンマンさが必要となります。「ここは、こういう風にやってほしい」「これはダメだ」とトップダウンで指示し、バラバラな力をひとつに結集しなければ零細企業は、すぐに空中分解してしまうからです。またメンバーもリーダーによる明確な指示を期待しています

・特に職人/クリエイター系の創業者は、自分自身が厳しい経験/修行を通じて「技」を身につけてきたため、社員にも同じように厳しい環境を与え、試行錯誤させながら、技を学ばせようとします。(それこそが、本人のためにもなるはずだと心から信じているからです。)

ところがすべての社員が、はじめからモチベーションや能力(スキル)が高いはずはなく、ましてや明確な将来ビジョンが見えている訳でもありません。

現実が思い通りに動かないことに創業者はいらだち、熱すぎる思いが裏目に出て人格否定に近い言葉で社員に不満や怒りをぶつけてしまいます。

バカ扱いされたり、キツい言葉をぶつけられた社員は、満足な指導もなく、はじめから高度な結果だけを求められることに不満を持ちます。もちろん反骨精神から「なにくそ」と思って頑張る人や、「愛のムチ」だと好意的に解釈する人もいない訳ではありませんが、その割合は決して高くないため、結果として退職者が続出し、最悪の場合は組織が崩壊してしまいます

ただ、あえてこの方式をとってふるい落としを行い、プロを養成している世界(料理、スポーツ、医者、芸能など)もないわけではありません。

また職人/クリエイター型の創業者は、自分が人から管理されることを嫌うので、社員にできるだけ自由を与えて、やりたい事を思いっきりやらせる「結果コントロール」型のマネジメントを志向します。そのため、経営がなかなか安定せず、ある種の成長ジレンマに陥ります。

・ 創業者のビジョンを理解し、その真意を読み取って業務に落とし込める実務マネージャー、言い換えれば経営の「仕組み化」を実現する初歩的なマネジメントコントロールの設計ができる実務者(No.2)が必要になります。


ドンキホーテ創業者の安田氏、星野リゾートの星野佳路氏、ユニクロ(ファーストリテイリング)の柳井会長などが、創業(もしくは家業を継いだ)当時に苦労したエピソードには共通点があります。それはワンマンで失敗し、その経験を通じて「人に任せる」ことの重要性について学んでいる点です。

例えば、ユニクロの起こりは柳井氏が家業の服飾店「小郡商店」を継いだところから始まっていますが、初期の経営に大失敗して、従業員が一人しかいなくなるという倒産の憂き目を体験しています。

そこで、自分ですべてをやるのではなく、ある程度信頼して「人に任せる」という事を苦い経験を通じて体得しているのです。そしてそれが、(柳井さんご本人の言葉を借りれば)「零細企業のおっさん」から「中小企業の会社経営者」への道を進ませたのです。

デキる人だけ集められるのであれば別ですが、相手が自分の期待レベルに到達していなくても怒らずに、根気よく「人を育てる」覚悟を決めらるかどうが、次のレベルに行くための分かれ道となります。

◎NEXT→ 第2段階:家業から企業への脱皮




成長の5段階プロローグ:基本解説はこちら
第1段階:ゼロからイチをつくる
第2段階:家業から企業への脱皮
第3段階:宦官と武闘派の戦い
第4段階:部分最適化とイノベーションのジレンマ
第5段階:新しい組織のかたち


【参考記事】
徒弟制ロマンス」という落とし穴 - 徒弟制を成立させる社会的条件(中原淳 東大准教授ブログ)

コンサルタント出身者が起業をするときに考えておきたいこと by 川鍋一朗 (経営者)
https://medium.com/first-penguin/%E5%85%83%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%AB%E7%B5%8C%E5%96%B6%E8%80%85%E3%81%AF-%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E3%81%AE%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%B9%E3%81%8D%E5%A7%BF-%E3%82%92%E6%B1%82%E3%82%81%E3%81%99%E3%81%8E%E3%81%A6%E3%81%AF%E3%81%84%E3%81%91%E3%81%AA%E3%81%84-8fa2b3570cb6

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若林計志

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株式会社フローワン代表取締役。日本最大級の海外オンラインMBAを立ち上げ、事務局長を約11年間務めた後、独立。ビジネスパーソンのマネジメント力アップ、学習システム/アプリの開発等に取り組んでいる。 TOCfE国際認定コース修了。コロンビア大学大学院ICCCR 交渉術講師認定コース修了(by Dr.B.Fish) info@flow-one.com

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