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女子柔道、体罰問題に見るマネジメントコントロールシステムの必要性

女子柔道を巡る問題は、園田代表監督の辞任で幕引きになるかと思われましたが、選手サイドから不満の声が上がっています。

「なぜ指導者の側に選手の声が届かなかったのか、選手、監督・コーチ、役員間でのコミュニケーションや信頼関係が決定的に崩壊していた原因と責任が問われなければならないと考えています。前強化委員会委員長をはじめとする強化体制や、その他連盟の組織体制の問題点が明らかにされないまま、ひとり前監督(園田氏)の責任という形をもって、今回の問題解決が図られることは決して私たちの真意ではありません」声明全文はこちら


つまり「誰かのせいにしたい」というのではなく、なぜ問題が起こったのかという根本原因を調査して、再発防止を図って欲しいという事です。

よく

「体質を変える必要がある」
「組織の刷新が急務」


といいますが、具体的にどうすればいいのかが曖昧だと、結局人を入れ替えて終わりとなってしまいます。もちろん、それでは根本的な問題は解決しません。なぜなら今回のような問題は、特定の「個人」に悪意があったからではなく、マネジメントコントロールシステムに問題があるからこそ起こっているのです。

組織構造

その意味では、監督を含めた各個人は、自分に与えられた職責を果たすために、自分なりのスタイルで一生懸命やっていた可能性が高いのです。


今回のような問題が起こりがちな組織を図解してみましょう。
組織

*図中の「行動、結果、環境」はマネジメントコントロールの3つの手法を示しています。

まず理事会は、監督を任命すると同時に明確な指導ガイドライン(倫理規定)を示し、そのパフォーマンスを定期的に監視(モニタリング)する責任があります。柔道であれば「指導ガイドライン」は創設者である嘉納治五郎氏の「自他共栄」「精力善用」の”道を講じる”という講道館哲学に基づき、精神的なものだけでなく、具体的行動規範にも反映させなくてはなりません。

園田監督は、今回批判された自分の指導法について、”指導ガイドライン”に明確に抵触するものだという認識があったでしょうか?あえてそれをルールを乗り越えて自分のスタイルで指導をしていたのでしょうか?

練習現場には、理事会メンバーもコーチもいたのですから、ダメならなぜ途中で言ってくれなかったんだ、という思いはないでしょうか?曖昧なガイドラインしか与えられていなかったとしたら、起こった問題のすべての責任が、個人に押し付けられるものではありません。

当初、園田監督に対する処分は甘いものでしたが、その理由として「責任追求が任命者である理事会メンバーに及ばないように配慮した」という報道もあります。

もし講道館の理念および倫理規定が、理事会メンバーに対して、監督に対しても、そして選手や一般人に対しても明確であれば、相互に牽制が効くので、今回のような問題は起こらなかったのではないでしょうか。また起こったとしても、相互に共通認識があれば、速やかに解決されたはずです。(最近まで非公開だったそうです。)



企業でも、時代が経つにつれて創業理念(DNA)が忘れられていくケースが多くあります。それを防ぐためにDNA伝承のための様々な仕組みを構築されていますが、それがない状態で、仕事だけが下に丸投げされると、どうしても組織のあちこちでほころびが出てきます。(逆に理念浸透がしっかりしていれば、現場の自主性でさまざまな創意工夫が行われる良いサイクルになります。)

まずは、自分たちが目指すべきものを全員で再確認し、それに応じたコントロールシステムを再構築する必要がありそうです。

*武道やスポーツはその性質上、どうしても危険を伴うため、指導者に対する絶対的な「行動コントロール」によって選手(生徒)の安全性を確保したり、指導資格を審査する「環境コントロール」などが必要なことを付け加えておきたいと思います。
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若林計志

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株式会社フローワン代表取締役。日本最大級の海外オンラインMBAを立ち上げ、事務局長を約11年間務めた後、独立。ビジネスパーソンのマネジメント力アップ、学習システム/アプリの開発等に取り組んでいる。 TOCfE国際認定コース修了。コロンビア大学大学院ICCCR 交渉術講師認定コース修了(by Dr.B.Fish) info@flow-one.com

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