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抽象化と具体化の「概念化スキル」を鍛える

マイクロソフトジャパン元社長の成毛眞さんが「HONZ」というお勧め本を紹介するサービスを運営されている。(その延長線で面白い本 (岩波新書)」というまさに面白そうな新刊を出されています)

その成毛さんの記事を見て面白いな、と思ったのは、

ビジネスのヒントは「ビジネス書」からではなく「非ビジネス書」から発見すべきだ

とおっしゃっているところ。一見関係なさそうなジャンルの本にこそ、本当のヒントがあるのです。

ボストンコンサルティンググループ代表の御立尚資さんも著書「使う力- 知識とスキルを結果につなげる」で、新しいビジネスのヒントは、ビジネス書よりもむしろ昆虫や動物の生態系についての本などから発見でき、プレゼンの技術は落語から学べるとおっしゃています。



両氏がおっしゃっているように、一見全然関係ないジャンルの情報からヒントを得るには「抽象化」と「具体化」の思考力を鍛える必要があります。

簡単にいえば、

「ライオン」「シマウマ」「トラ」「ニワトリ」

がいた場合「動物」という概念でくくったり、(「肉食」と「草食」)(「四足歩行」と「二足歩行」)などの共通項でグルーピングするのが抽象化です。

(ロジカルシンキングでいうピラミッドストラクチャーの階層を一段上に上がることです)

優秀な人って、大体この「抽象化」の能力に優れているんですよね。一度深いところまで抽象化する事によって、モノゴトの本質を見抜き、他との共通点を発見する事ができる

この思考法が身に付くと、何を見てもそこから有益なヒントを得られます。また関係なさそうな別々の事象の間に、まったく新しい関係性を発見したりします。

*落語の謎掛け(「その心は!」と聞くあれです)も近い能力かも・・・。

アップルの社長だった原田泳幸氏が、マクドナルドで経営手腕を発揮されているのは有名ですが、業界が違っても活躍できるのは、自分の持っている経験や知識を「抽象化」し、汎用的に利用できるレベルに深めているからに他なりません。(その逆が「専門バカ」と呼ばれる状態です。)

*原田氏のマック時代の経営は再検証の必要アリですが!(追記 2016.2.8)

「これは自分の業界に関係ない」「この本からは全然学ぶ事がなかった」などよく言ってしまう人は、もっと抽象化力を鍛える必要があるかも知れません。

脳科学でたまに引き合いに出される「もずのはやにえ」という事例があります。鳥類のもずは、捕まえた獲物を枝に刺す習性があるのですが、あまりに記憶が正確で抽象化が弱いために、葉っぱが落ちたりして風景が変わると、どこに獲物を隠したか分からなくなってしまうのだそうです。諸説あるようですが、これが本当だとすると残念な鳥ですね。。。

松下幸之助氏は

風が吹いても、悟る人がおるわな

という言葉を遺していますが、まさにこれは抽象化スキルの事をおっしゃっています。



ただし、モノゴトを抽象化して考えるだけでは、実際には役に立ちません。それを実際に応用できる「具体化」力が問われます。具体化力が弱いと

オマエは立派なリクツをいうけど、口だけだなあ

などど言われてしまいます。

具体化の能力に優れている人は、難解なコンセプトを見たときに、

「これって、例えばこういう事だよね」
「そのアイデアは、この3つをやれば実現できるよ」

とすぐに具体的なアイデアがひらめき、実行に移します。

ハーバード大学のロバート・カッツ教授は、管理職(マネージャー)に必要なスキルをとして、モノゴトを概念化して捉える「コンセプチュアルスキル」を挙げていますが、まさにこれは「抽象化」「具体化」のことを示しています。

著書「ストーリーとしての経営戦略」がベストセラーとなった一橋大学の楠木建先生が、ユニクロ(FR)の柳井さんについて下記のように書かれていますが「まさに!」という感じです。

「柳井さんの思考は目の前でおこっている具体的な物事と抽象的な原理原則の体系と常時いったりきたりしているのである。この具体と抽象の振幅の幅がとんでもなく大きい。振幅の頻度が高く、脳内往復運動のスピードが極めて速い。
戦略ストーリーを構築する経営者の能力は、どれだけ大きな幅で、どれだけ高頻度で、どれだけ速いスピートで具体と抽象を行き来できるかで決まる。」 出典:『一勝九敗』楠木 建の「戦略読書日記」【第4回】



蛇足ながら「抽象化」によって、モノゴトの深く掘り下げるという思考作業を続けると、最後には「ツナガル」という感覚に到達します。「欲求段階説(ピラミッド)」で有名なマズローが晩年考えた事や、MIT講師のシャーマーによる「U理論」、ユングの考えた「集合的無意識(普遍的無意識)」に近いコンセプトです。(あまり行き過ぎると、アヤシい世界になるのですが!)
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[C6] 「ツナガル」とは?

抽象化思考でググってたどりつきました。
勉強になるエントリーでしたが、蛇足の

>最後には「ツナガル」という感覚に到達します。
という点に非常に興味を持ちました。

これは、単体で存在できるものはなく必ず抽象化されるということになるからでしょうか。

宜しければもう蛇足の蛇足を教えていただけると嬉しいです!
  • 2016-02-08 00:24
  • 9art
  • URL
  • 編集

[C7] Re:「ツナガル」とは?

>これは、単体で存在できるものはなく必ず抽象化されるということになるからでしょうか。

コメントありがとうございます。抽象化すると、共通性が見えやすくなるって感じでしょうか。

たとえば「農業のプロ」と「医療のプロ」なんて一見関係なさそうですが、
深いレベルで、

▼表面的ニーズに応える
農家:市場のニーズに応じて栽培して終わり
医者:患者に薬を処方して終わり

▼本質的ニーズに応える
農家:心身ともに健康になるような農産物を提案する
医者:患者が病気になった理由を一緒に考える

▼根本的なニーズに応える
農家:農業と人に在り方について社会と向き合う
医者:患者がどのような生き方をしたいのかに寄り添う

この当たり前でいくと、農家と医者でいろいろ語り合いながら、共通点が見つけられ、学び合うってことができます。

さらに、社会と自分たちの仕事が密接につながっていることにも気づきます。

仏教的な世界観から言えば、この世の物事は「おかげ」を受けながらつながっているわけで、その思考は「システム思考」にも共通しています。

ご参考までにお時間があれば。
http://flowone-lab.com/blog-entry-208.html
  • 2016-02-08 12:08
  • 若林計志
  • URL
  • 編集

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若林計志

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株式会社フローワン代表取締役。日本最大級の海外オンラインMBAを立ち上げ、事務局長を約11年間務めた後、独立。ビジネスパーソンのマネジメント力アップ、学習システム/アプリの開発等に取り組んでいる。 TOCfE国際認定コース修了。コロンビア大学大学院ICCCR 交渉術講師認定コース修了(by Dr.B.Fish) info@flow-one.com

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