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「経常利益主義」の弱点とスループットの考え方

当たり前ですが、良い会社では経営と現場が一体化しています。

つまり経営が「戦略」として掲げたものが、現場のオペレーションにスムーズにつながっている必要があるのですが、実はこれが結構難しい。

例えば、KPI(重要経営指標)の設定ミスで、現場が混乱しているケースって結構あるんです。

「原価率下げろー!」
「同時に在庫も減らせー!」

っていうのは、実は矛盾するKPIなんです。

そのことを教えてくれるのが、TOC(制約理論)の「スループット会計」という考え方。


ゴールドラット博士のコストに縛られるな! 利益を最大化するTOC意思決定プロセスゴールドラット博士のコストに縛られるな! 利益を最大化するTOC意思決定プロセス
(2005/03/04)
エリヤフ・ゴールドラット



時間辺りにいくら販売できるか(=儲かるか)を計算する方法で、通常の会計に「時間」の概念を入れたところがユニークなポイント。

まずスループット会計が示すのは「経常利益至上主義」が誤っているということ。

<売上ーコスト=利益>

だから別に間違っていない気もするが、会計の詳細をみていくと面白い。

「経常利益主義」はムダな在庫を増やす動きを助長してしまうのです。

例えば「損益計算書(P/L)」において、「売上原価」に計上されるのは、販売された商品にかかった個別の原価になる。例えば、100個商品を作って、30個売れたら、売れた30個分を作るのにかかった原材料費だけが「売上原価」になる。

売上高
売上原価 ←ここ
ーーーーーー
粗利(売上高総利益)
販管費
ーーーーーー
営業利益
営業外損益
ーーーーーー
経常利益

じゃあ、売れ残った70個はどうなるかと言えば、PLには出てこずに「貸借対照表(BS)」において「資産(在庫)」になる。そしてその

資産価値は、

「原材料費+経費(それを作るのにかかった費用)」

になる。もちろんその在庫がいつか売れればいいけど、携帯電話やパソコンのようなモデルチェンジが激しいものだったら、半年も立てば型落ちになって、定価では売れなくなる。(つまり「不良在庫」になる)

なので、最後には無価値になる前に原価割れでもいいので叩き売りして、損失を計上することになる。(不良在庫でも倉庫代などのコストがかかるからです。)

さらに売れる前の在庫は「お金」が「在庫」に形を変えているとも言えるので、本当は開発やマーケティング費用などとして自由に使えたはずのキャッシュを減らしている状態とも言える。(しかも時間が経つ毎に価値が落ちるマイナス金利の投資信託と同じ!)



ここでもし単純に「売上原価」だけを下げようと思ったら、たくさん製品を作った方がお得になる。なぜなら、たくさん作れば製品1個当たりの固定費(工場の家賃など)の配賦額が減るので原価が減るから。(そのように見えるから。)

言い換えれば、在庫を作りすぎるということは、売れ残った在庫にも固定費としてかかる加工費(=固定加工費)を均等配分する(無理やり押し付ける)ことで、見せかけの売上原価を低くする行為とも言える。(なので配分される費用を下げたければ、その数は多ければ多いほどいい。)

もちろん必要以上に作って売れるかはかなり怪しいが、単純に

「原価を下げる(コストダウン)」

だけを目的とするなら、売れようが売れまいが製造する人には関係ない話。で、実際にじゃんじゃか過剰に作ると、確かに見た目の「売上原価」は下がって、見かけの利益は増える。

おまけにバランスシート(BS)上の「資産」も増えちゃって、リッチな会社に見えてしまう。

でもこれじゃあ、キャッシュフロー(資金繰り)が悪くなるのは当たり前の話。

そこで「スループット会計」では、ムダな在庫を作るほど利益が少なくなるような計算式になっているのがミソ。計算に使う要素は3つだけ。


スループット(TP/Throughput)- 販売を通じてお金を生み出すレート(スピード)

資産在庫( I/Inventory)- 販売を目的に購入したもの(材料)に費やしたお金(原材料費・外注費、仕掛品・製品)

業務費用(OE/Operating Expense)- 投下したお金を製品に変換するために費やすお金(原材料費&外注費以外の経費、総人件費など)

ーーーーー

STEP1)
スループット(限界利益に近いイメージ)
  =実際に販売できた売上高ーI(直接かかった材料費=真の変動費)*

(*売れようが売れまいが関係なく、かかったすべての材料費!)

STEP2)
☆利益 =TP(スループット)-OE(業務費用=材料費以外のすべてのコスト)



こう計算することで、要らない在庫を作っちゃうほど、利益が減ることなるのが分かる(要らない在庫や原材料を保管する倉庫費、人件費などの変動費を含めた業務費用が増えるので)

逆に言えば、市場の需要に合わせてドンピシャで売れるだけ製造すると、利益が最大になるって訳。

そのためにはスループットを最大化する必要があり、工場の生産性を下げている「ボトルネック」(=制約条件)が重要になります。

ボトルネックが解消されると、生産されるスピードがアップするので

②リードタイム(材料を投入してから完成品になるまでの時間)が短くなる
 (例えば、180日後の需要を予測するのと、1週間後の需要を予測するのでは後者の方が簡単)
③在庫が減る(=業務費用が少なくなる)

ので、需要をみながら製造したり、製品を改善したりできるって訳です。



一見製造業にしか関係ないかなーという気もするのですが、なんらかの在庫もって商売しているビジネス(流通でも販売会社でも)にはすべて当てはまる考え方です。


少しややこしいので、ここの説明が分かりやすくてオススメ。
ざっくりわかるTOCスループット会計


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(2002/08)
村上 悟、井川 伸治 他

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まだまだ理解が浅いので、今後まだまだ掘り下げたいと思います。
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若林計志

株式会社フローワン代表取締役。日本最大級の海外オンラインMBAを立ち上げ、事務局長を約11年間務めた後、独立。ビジネスパーソンのマネジメント力アップ、学習システム/アプリの開発等に取り組んでいる。 TOCfE国際認定コース修了。コロンビア大学大学院ICCCR 交渉術講師認定コース修了(by Dr.B.Fish) info@flow-one.com

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