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「仕事中だけうつになる人たち」とマネジメントコントロール

2004年発刊の川上先生と小杉正太郎氏の共著です。川上先生には前職で大変お世話になり、著書はすべて読ませていただいているのですが、本書は特に心理学的にマネジメントにアプローチするヒントが満載です。

川上先生は、京都大学教育学部教育心理学科卒で、心理学の大家・河合隼雄先生から直接薫陶を受け、その上、モチベーション論で有名なハーバードのデイビッド・マクレランド教授と一緒にコンピテンシーの概念を日本に紹介された方でもあります(蛇足ながら、おなじ京大卒の神戸大学の金井先生とも仲良しとのこと。)

本書は、いわゆる「社内うつ」について叫ばれ始めた頃に書かれた本なのですが、改めて読み返してみると「なるほどなー」と思う点が満載です。特にマネジメントコントロールの文脈で見ると、考えさせられる記述がたくさんあります。


仕事中だけ「うつ」になる人たち―ストレス社会で生き残る働き方とは仕事中だけ「うつ」になる人たち―ストレス社会で生き残る働き方とは
(2004/09)
小杉 正太郎、川上 真史 他

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人が組織内でストレスと感じたときの対処法(コーピング)は2つあります。

(対症療法)→ストレス発散のカラオケ、飲みなど
(根本療法)→根本的な問題(ストレッサー)の解決

ストレッサーには「量」(過剰な業務量)、「質」(仕事の難易度、業務の曖昧さなど)などあります。面白いのは、成果主義の会社で高い成果を上げると、次回からはもっと高い成果を要求されるために、それ自体がストレッサーになり、転職につながるという話(P82)。よく耳にするありがちなケースです。

・コンピテンシー(成果を上げるための特性)には、5段階があります(P93)

レベル1:言われたことをやる
レベル2:言われなくてもやるが、当たり前の事だけやる
レベル3:置かれた状況の中で、最善を尽くす
レベル4:置かれている状況を変えるためのアクションを起こす
レベル5:目的を達成するために、新しい状況をつくりだす

レベル1−3はいわゆる「状況従属型」、4−5は「状況変容型」です。4−5は、サラリーマン型というより経営者型の思考なので要注意。組織を理想に向かって変容しようとすれば「半沢直樹」的世界にまっしぐらです。本書によれば、

レベル4やレベル5の人がでてくると扱いにくいので、レベル4−5を発揮させないようにする傾向があります」(P94)

とのことです。なるほどなー、と思うと同時に、レベル4−5を発揮させている会社って、どんな会社だろうと興味がわきます。

・本書ではストレッサーの原因として、イエスマン上司の存在を例として挙げます。

きちんとした経営者がいて、意味のある指示を出したとしても、管理職がその意味を分からずに、ただ「やれ」という指示だけを下に伝える。どのような意味があって、目的が何かということを理解していない。そうすると指示を受けた方も、意味が分からず面倒な事をやらなければならない。当然、ストレスの問題が生じてきますよね」(P100)

上が言った事を間違いなく行うことによって、自分の存在理由や意味を示そう、と。まだまだそういう人は多いのです。不幸なのが、そういう管理職の部下になった人たちですね。(中略)一つひとつの仕事について、目的や行く先をきちんと説明する必要があります。それだけでもストレスの原因をある程度抑えられると思います」(P101)

→これはまさに拙著「
MBA流 チームが勝手に結果を出す仕組み 」で下記の図を使って解説している部分です。
スライド04

それぞれのレベルで、マネージャーがストーリーとして目の前の具体的な仕事と組織全体のゴールの因果関係を語れていないと、部下は何のために、その仕事をしているか分からなくなってしまうのです。

拙著では「マネージャーはメッセンジャーではない」と繰り返し書いていますが、マネージャーは上からの指示を適切に噛み砕く責任を負っているのです。それが出来ていないと、結果的に部下にストレスがたまったり、「指示待ち人間」にならざるを得ないのです。

川上先生は「ゴールイメージが不明瞭だと、到達方法はきわめて固定的になります」(P102)と書かれていますが、まさにおっしゃる通りという感じです。いいかえれば、「指示待ち」をするのは、”怠けている”というより、多くの場合「失敗したくない(会社に迷惑をかけたくない)」という感情が背景にあり、達成すべきゴールや、自分が行使できる権限の範囲が見えないことに起因しているのです。

ついでに書き加えると、マネージャーが上からの指示を間違って解釈し、伝えているケースもあります。例えば、トップが「顧客満足が大切だ」と言っているのに、その下のマネージャーが売上至上主義的な指示をしていると、現場スタッフはジレンマで引き裂かれ、それが社内ウツを誘発するという訳です。

・「達成動機そのものは、なかなか開発できませんが、行動というところに焦点を当てれば、モデル化もできるし、自分でもマネできる。(中略)いわゆるマクレランド流のコンピテンシー論と私(川上)日本で応用しているコンピテンシー論は、その点で違うものです」(P125)

→これは深い。これって「行動コントロール」の効用だと思うんです。達成動機自体ではなく、「行動」自体をコントロールして成果に結びつけるという事なんですが、実はそれなりにやっているうちに、やる気が上がるって事は、往々にしてあるんですよね。「精神→行動」ではなく「行動→精神」なんです。

・「フィードバックされても、自分の行動を変えようと思う人なんて、そんなにいないですよね。特に、上司を信頼していない人であれば、上司からフィードバックを受けても逆効果かも知れません。(中略)自分で自分にフィードバックしなければ、行動は変わりません。」(P132)

→「そうそう」と思います。だから「見える化」であり、「結果コントロール」なんです。

以上、深読みするとかなり考えさせられる一冊です。問題が正確に把握できると、解決策も見えやすくなりますね。
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若林計志

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株式会社フローワン代表取締役。日本最大級の海外オンラインMBAを立ち上げ、事務局長を約11年間務めた後、独立。ビジネスパーソンのマネジメント力アップ、学習システム/アプリの開発等に取り組んでいる。 TOCfE国際認定コース修了。コロンビア大学大学院ICCCR 交渉術講師認定コース修了(by Dr.B.Fish) info@flow-one.com

MBA流 チームが勝手に結果を出す仕組み

組織や人が目標に向かって自然に行動する「仕組み」を構築する方法論=「マネジメントコントロール」を分かりやすく解説します。

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