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魂が伝わる講義映像(正しいEラーニングの作り方 その5)

以前オーストラリア人の教授と話していた時の話です。

ある日本の大学のパンフレットを見せながら、その学校の特徴について説明していたのですが、オーストラリア人の教授が不思議そうな顔をしているのです。

何かと思って聞いてみると、こんな答えが返ってきました。

「なんでプロフェッサー達は、みんなしかめっ面を写真に写っているんだ?機嫌が悪いのか?」

生粋の日本人である私には違和感はなかったのですが、講師一覧のページをよくよく見てみると、確かにみんな怖い顔をして写真に写っているのです。(欧米の大学教授のプロフィール写真は、大抵の人が笑顔なのでよけいに変に思ったのでしょう。)

当たり前すぎて見過ごしている事を指摘されて、はたとその理由について考えてみました。

これは私の仮説ですが、日本でいう”先生”は、師匠のようなイメージを期待されているので、多くの先生はその暗黙の期待に応えるため、わざと威圧感を出し、学生に尊敬される(もしくはナメられない)ようなキャラを演じているのではないでしょうか。もしニヤニヤしていたら

「インテリジェンスがなさそう」
「不真面目そう」
「(緊張感が感じられず)信頼感が下がってしまう」

と思われてしまうという恐れもあるかも知れません。

もちろん、欧米でも米ウェストポイントのような陸軍士官学校のホームページを見ると、教官はやや怖い顔をしています。その意味では、日本の大学教授の写真と共通点があるのかも知れません。つまり「ここは厳しい場なんだ」という暗黙のメッセージを表情を通じて伝えているのです。(実際にお会いすると、にこやかで楽しい先生が多いのですが。)



●映像講義はある種のエンターテイメント(Edutainment)

limelight_2616971.jpg
ここからがやっと本題です(汗)。講義映像を撮影する際に、講師がカタログの写真と同じように、怖い顔をしながら淡々と、そして突き放すようなトーンで授業してしまうと、面白くも何ともない映像になってしまうのです。

逆に話し方は少々下手でも、映像を見ている人が

この先生は自分の話している事が本当に好きなんだなあ

ということがちゃんと伝われば、とても良い映像講義になります。

我々の脳には人を模倣する「ミラーニューロン」という神経細胞があり、人が何かに興奮しながらしゃべっているのを見ると、自分の脳にある同じ部位が無意識に興奮します。

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となれば、講義でもしゃべっている人(講師)が、自分が教えている内容がエキサイティングであり、自分もそのことを心からエンジョイしていて、その面白さをみんなに分かって欲しいんだという気持ちが、画面を通じて自然に伝わってくる事が最も大切なのです。

そのためには、eラーニング作成者側は、ある程度意識して、講師に「権威を保つために、固めの表情で難しめにしゃべろう」という妙な固定観念を取り去ってもらう必要があるのです。そして、その先生の素の部分を殺さず、講義されているトピックにご自身がのめり込んでいる姿が、画面を通じてにじみ出るようにお手伝いすれば良いのです。

またその道の専門家であるはず先生が、まるで素人のように机の上の原稿を棒読みしながら、淡々としゃべっている講義映像を見ることがありますが、そのような自体は絶対に避けるべきです。

なぜそういう映像になってしまっているかと言えば、多くの場合、撮影側が

「極力失敗しないように、事前に打ち合わせした通りにしゃべってください」

的な、空気を漂わせてしまっているからなのです。

そういうプレッシャーをかけず、さらにテレプロンプターなどのツールも使いながら自然な映像を作り出すような事が、プロに求められる技術です。

そしてこれがうまくいけば、講師の本当の良さ、そして”魂”までが伝わる最高の講義映像を作ることが出来るのです

マイケル・サンデル教授の「ハーバード白熱教室」や、「東進ハイスクール衛星予備校」などはそのよい例でしょう。

以上、「眠たい映像を作らない技術(正しいEラーニングの作り方 その3)」の補足に当たるコラムでした。
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若林計志

株式会社フローワン代表取締役。日本最大級の海外オンラインMBAを立ち上げ、事務局長を約11年間務めた後、独立。ビジネスパーソンのマネジメント力アップ、学習システム/アプリの開発等に取り組んでいる。 TOCfE国際認定コース修了。コロンビア大学大学院ICCCR 交渉術講師認定コース修了(by Dr.B.Fish) info@flow-one.com

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